「群来」の残像
 小樽の浜にニシンの「群来(くっき)」があったとテレビや新聞が報じたのは今月(2月)2日であったような気がします。
 確か、去年のちょうどこの時期に、特別な目的もなしに訪れた石狩管内の小さな漁港濃昼(ごきびると読む)でニシンが獲れていて、網を引き上げて港に帰った船から下ろされた網からニシンをはずし、箱詰にする作業に追われる数家族総出の作業現場に出会いました。
 普段は寂れた小さな漁港で、特に日中は人っ子一人見かけることのないところですが、この時ばっかりは、ねじり鉢巻の父さんも、綿入れ半纏で着膨れた母さんも、近寄り難いほどの活気にみちた仕事振りで、ど素人のカメラ小僧にはカメラを向けたら怒鳴られそうで、恐る恐るお願いして数カットシャッターを切らせてもらって帰ってきたのでした。
 そんな思い出があって、テレビニュースで「群来」を見た数日後濃昼よりは、はるかに近い同じ石狩管内の望来までニシン漁を見に出かけました。
 訪ねた小さな漁港は望来と古譚(こたん)の真ん中ころにある小さな港で漁師の家が3、4戸あるきりです。
 昼過ぎの港には、もちろん人影もなくカラスが騒いでいるだけでしたが、海を眺めていると大きな双眼鏡を持った若い漁師が現れて遠い沖合いを眺めています。
 「ニシンが獲れていると聞きましたが…」と声をかけてみました。
 「なに、さっぱりさ!、いいのは小樽だけだ!」そんな返事でした。
 南は積丹(しゃこたん)あたりから北は初山別(しょさんべつ)あたりまでの海岸にニシンが作り上げた、いわゆるニシン御殿は数々ありますが、今では観光名所でわずかにその名を残すのみです。
 しかし、私のような、いわゆる余所者でさえニシンの「群来」と聞くと「もしや!」と過去の栄光に期待します。
 「なに、さっぱりさ!」と答えた若い漁師にしても現実のニシン御殿は昔の語り草ですが、やっぱり他の魚とは違ったニシンに対する期待感があるはずでした。
 この小さな港を出て、さらに足を延ばし、結局厚田の港まで行きましたがニシンの影もなく、その代わりにきれいな夕日と出会いました。
 しかし、これまた残念なことに、このきれいな夕日も未熟な「腕前」のカメラでは如何ともしがたく、せっかくの夕日もだいなしでした。
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 望来と古譚に挟まれた小さな漁港です。すでに70年も前のことになりましたが、私の友人の父親が、この港の数百メートル先でニシン漁の最中に船が転覆し命を落としたのだそうです。
 ニシン漁が華やかだった時の話です。
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 港を出入りする船もなければ沖を行き交う船も見当たりません。午後4時頃白い船体の漁船にしては洒落た一艘の船が港に戻りました。
 何処で、どんな漁をしてきたのでしょうか?
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 この日は気温も暖かで、海も穏やか、そこはかとなく春の気配が広がる海を眺めているには絶好の日和でした。
 徐々に夕暮れが訪れ、穏やかで、きれいな夕焼けが広がりました。
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by ebataonnzi | 2011-02-15 17:27