写真とは、何だろう。
旧聞に属しますが、今年の5月、写真家、原富治雄氏の写真展が札幌キャノン・ギャラリーで開かれました。
平素から懇意にしていただいていて、偶々その日も打ち合わせでご一緒したKさんと連れ立って、この写真展に立ち寄りました。 写真家、原富治雄氏については、全く予備知識はなく、その作品も観たこともありませんでした。 展示されていた写真は、何処か外国が舞台のF-1レースを撮ったもので、モノクロをベースにしたローキーな画面にテールランプの赤が滲むように溶け込んでいたり、沢山のコマシャールが刷り込まれたドライバーのヘルメットが鮮やかに浮かび上がるように撮られた写真に圧倒されました。 「こんな写真、どうやって撮るんだろう?」などと話しながら帰ったのでしたが、その疑問が後々も尾を引いていて、確かその4,5日後に所用のついでに再度この写真展を訪れました。 ちょうど来場者が途切れた時間らしくて、写真を観る人は一人も居らず、会場の当番と思しき男性が一人、片すみの椅子に座っているのみでした。 一通り作品を観て歩いた後で、その当番と思しき男性に「このような写真は、どのようにして撮るのでしょうか?」と問いかけて見ました。 返事は至って簡単で、「これは、一枚の画像をモノクロに変換したものと、元のカラーのものをレーヤーで重ねて、色を出したい部分はモノクロのレーヤーの部分を消せば良いのです」と言う返事でした。 また、その返事の後で、「簡単な技術ですから、あなたも挑戦してみてください」と言う激励までしてくれました。 話の後で分ったのですが、この人こそ、この写真展の写真作家原富治雄氏その人でした。 「簡単な技術ですから、あなたも挑戦を…」と言われても、あの圧倒的な迫力とローキーな画面から浮かび上がる赤いテールランプやドライバーの鳶色の瞳の神秘さを観た後では、「私如きが手出しをするような代物ではない」と勝手に決めたのでした。 ところが、先日、自宅の近くにある小さなローカル空港の夕焼けを撮りに出かけた折、頻繁にヘリの発着があり、このヘリも入れた写真を…と考えて、それに挑戦してみました。 しかし、時はすでに遅く、つるべ落としの日が落ちて、暗くなり、その日の撮影は終わってしまいました。 後日、パソコンをいじって遊んでいた折に画像の合成を思い立ち、空港の夕焼けの写真と別なカットのヘリの写真を合成してみました。 これを、心おきない友人に見せて自慢の種にしたのですが、素人目にはほとんど「合成写真」とは見破られませんでした。 そんな訳で、味を占めたわけではありませんが、写真家、原富治雄氏の手法を真似て、霊場として市民に親しまれている八十八ヶ所のお地蔵様に、その手法を試してみました。 自室で、自分一人でパソコン上で遊んでいるうちは、様々な発想も湧き、新しい技術も習得できて楽しいのですが、例え誰も見てくれない、更新もめったにしないブログでも、やっぱり、外向きに怪しげな写真を陳列するとなると、「写真とは?」などと言う呪縛と恥ずかしさが先にたって、心は穏やかではありませんでした。 少し大げさですが、プロの写真家の中にはカメラをフィルム用からデジタル仕様に持ち替えるには、それ相応の覚悟が必要だったのでは?そんな気がします。 現在はともかく、つい7年か8年前ならプロ写真家にとって、フィルムからデジタルへの乗り換えは、正しく、カエサル=シーザーがルビコン川を渡る心境だったのかも知れません。 <写真をクリックすると大きくして見ることが出来ます。> ある夜の夜更け、パソコンで画像をいじっている折に、急に画像の合成を思いついて、古いフォトショップの手引き書と首っ引きで画像の合成をして見ました。 画像の条件も良かったのでしょう。ヘリの画像があまり違和感なく合成できました。 しかし、合成と分らないように、できれば出来るほど「偽物づくり」の罪が重くなって行くようで、気持ちとしては穏やかではありませんでした。 言うまでもありませんが、単純に花を切り抜き、黒い背景に貼り付けただけの写真です。 これを見て、ただ普通にシャッターを押して撮影したと考える人はいないでしょう。 見る人は、みんな「デザイン」として見るわけで、その意味では罪は軽いのですが、写真とし評価は、全くの「枠外」と言うことになるのでしょうか? かなり長い間、画像の合成などに手を出しませんでしたが、ほんの少しのきっかけで、何もなかった空にヘリを一機飛ばせて見て、プロの写真家から「簡単な技術だから、あなたも挑戦してみたら…」の言葉を思い出して、ガイドブックを頼りに、写真の上に絵を描くようなことをやってみました。 確かに、カラーとも違い、また、モノクロとも違う画像が出来上がりました。 「写真」という立場から見たら、その評価はどうなるのでしょうか?私自身は、全く分りません。
by ebataonnzi
| 2010-10-13 12:01
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季節の写真と文章
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